■埋蔵文化財調査室 調査成果速報展 文京遺跡の解明Ⅳ「絵画土器が語る弥生人の心象風景」

このたび,愛媛大学埋蔵文化財調査室は,調査成果速報展「文京遺跡の解明Ⅳ 絵画土器が語る弥生人の心象風景」を開催します。 城北キャンパスに所在する西日本屈指の大規模集落である文京遺跡では、多くの絵画土器が出土しています。弥生人は何を描き、何を思ったのか。文京遺跡から出土した絵画土器に描かれた線刻画を分析することで、弥生人たちが土器に込めた心象風景を復元していきます。

日時 平成28年6月29日(水)~平成28年10月31日(月) ※毎週火曜日は休館
会場 愛媛大学ミュージアムエントランス(愛媛大学城北キャンパス内)
時間 午前10時~午後4時30分(入館は午後4時まで)
入館料 無料
対象 一般の方
駐車場 無(公共交通機関をご利用ください)※報道機関の方でお車で取材に来られる場合は、正門警備室で会社名等をご記入の上、来客用駐車場をご利用ください。

①描かれた雄シカ 

左端が二又に別れた2本の線を上下に対置させ、別の2本の線が下方に延び、横方向に2本の線が追加され、左側に向かって平行に延びています。これは雄シカの枝分かれした角と長い首、そして胴を表現しています。首と胴は輪郭線だけを表現し、足は描かれていません。城北キャンパス周辺に定住して大規模集落を作り上げた文京遺跡の弥生人たちは、雄シカを自然領域の象徴としてとらえ、土器に描きました。

②描かれた船と重複する絵画

2本の線の先端が反り上がる形となり、その上に8つの短線が並んでいます( 深緑の着色部分)。これは舳が反るゴンドラ形の船とそれに乗った人の姿を表現しています。また、船の一部と考えられる表現( 赤い着色部分) もあります。さらに船に覆いかぶさるように直線や弧線が描かれています( 白抜き部分)。波や接岸施設を描いているのでしょうか。狭い範囲に重複する図像が描きこまれていることがわかります。この絵画には、複数の船にたくさんの人が乗り、航走している情景が描かれており、海を通じて往来する活気あふれる弥生人たちの躍動感が感じ取れます。

③描かれた太陽

二重の円の周りを放射状の花弁形の線刻が取り巻いています。太 陽か花でしょうか。弥生時代に花を表現した線刻画はありません。一方、太陽を表現した同じ意匠の絵画が鳥取県や奈良県で発見されています。二重の円は光源から発せられるフレア、花弁形の線刻はコロナとみることができ、強い光を放つ太陽と考えられます。日の 出入りや日食など、太陽の動きは、当時の人々にとって神秘的なものであり、絵画には弥生人たちの驚きや慄きが表現されています。

<弥生人の心象風景>

描かれた雄シカは、足や胴の表現が省かれているのに対し、頭部のみ明確に枝分かれした角が 表現され、雄シカであることを強調しています。船は、人が乗り、海を航行する様子が描かれ、太陽を、強い陽光を花弁形の線刻で表現しています。弥生人が描いた絵画は、日常生活の周りに存在し、弥生人たちが身近に感じたものを頭に浮かべながら、イメージとして表現したものです。こうした一つ一つの線刻絵画に表現された心象風景を読み取ることで、文京遺跡に住む弥生人たちの営みや世界観に迫ることができます。

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