■埋蔵文化財調査室 調査成果速報展 文京遺跡の解明Ⅵ「伊予の青石、赤石」

このたび,愛媛大学埋蔵文化財調査室は,調査成果速報展「文京遺跡の解明Ⅵ 伊予の青石、赤石」を開催します。埋蔵文化財調査室では,城北キャンパス内の文京遺跡をはじめ,愛媛大学内の遺跡(埋蔵文化財)の発掘調査およびその成果の公開を行っています。本速報展では,「伊予の青石、赤石」に注目し、石器や石材に残された痕跡から石材の流通と製作・消費の実態を明らかにしていきます。

日時 平成29年12月13日(水)~平成30年2月5日(月) ※毎週火曜日は休館
会場 愛媛大学ミュージアムエントランス(愛媛大学城北キャンパス内)
時間 午前10時~午後4時30分(入館は午後4時まで)
入館料 無料
対象 一般の方
駐車場 無(公共交通機関をご利用ください)※報道機関の方でお車で取材に来られる場合は、正門警備室で会社名等をご記入の上、来客用駐車場をご利用ください。

「伊予の青石」で作られた磨製石器

穂摘具である石庖丁は、緑色片岩を研磨した磨製石器として作られています。 石器石材である緑色片岩は、変成岩の一つである結晶片岩の一種です。四国山地には中央構造線に沿って、東西に延びる三波川変成帯があり、結晶片岩が基盤岩を形成しています。愛媛県域の三波川変成帯からは良質の緑色片岩が産出されることから「伊予の青石」と呼ばれていました。文京遺跡では大型竪穴建物1棟と中・小型竪穴建物で構成される住居群が、複数のまとまりをつくっています。

 

  

「伊予の赤石」で作られた打製石器
赤色珪質岩製の打製石鏃や刃器(スクレイパー)は、打撃と押圧による剥離を繰り返すことによって作られた打製石器です。石器石材である赤色珪質岩は、深紅に近い赤色を呈した堆積岩(頁岩・チャートを含む)で、愛媛県南部の大洲市と内子町にまたがる標高654mの神南山周辺(文京遺跡から約40㎞)で露頭していることが知られています。文京遺跡では各住居群から石鏃や刃器などの製品をはじめ、剥片や未成品が出土しています。

  

<文京遺跡における流通・製作・消費の実態>

「伊予の青石」 磨製石庖丁の石材である緑色片岩の石材採取地は、文京遺跡の弥生人たちが日帰りで行動ができる範囲である10㎞圏内の近接地にあり、比較的容易に必要量を入手することができるところにありました。その石材の獲得から磨製石庖丁の製作、穂摘み具としての使用は、個別の経営単位である住居群ごとで行っていました。

「伊予の赤石」 一方、打製石器の素材である赤色珪質岩は、最短でも40㎞を超える遠隔地を産地としており、その入手方法や入手量も限りがあったと考えられます。入手した素材剥片は集落単位で管理され、集落の一画で集中的に打製石器と調整・加工された石器素材が製作されたと考えられ、それが各住居群に供給されました。住居群に住む弥生人たちは、製品あるいは加工された石器素材を入手し、製品を仕上げ、使用しました。

 

■報道関連

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