■埋蔵文化財調査室 調査成果速報展 文京遺跡の解明Ⅶ「弥生時代の布―土器に残された痕跡から探る」

このたび,愛媛大学埋蔵文化財調査室は,ミュージアムにて,中間成果速報展「文京遺跡の解明Ⅶ 弥生時代の布-土器に残された痕跡から探る」を開催します。 城北キャンパスに所在する西日本屈指の大規模集落である文京遺跡では,布痕跡が残る土器が多数出土しています。速報展では布痕跡から布を復元し,織り目や糸の繊維を分析することによって,弥生時代の暮らしを具体的に明らかにします。

日時 平成30年2月14日(水)~平成30年3月26日(月) ※毎週火曜日は休館
会場 愛媛大学ミュージアムエントランス(愛媛大学城北キャンパス内)
時間 午前10時~午後4時30分(入館は午後4時まで)
入館料 無料
対象 一般の方
駐車場 無(公共交通機関をご利用ください)※報道機関の方でお車で取材に来られる場合は、正門警備室で会社名等をご記入の上、来客用駐車場をご利用ください。

原始・古代の糸や布は、現代まで残ることがほとんどありません。ところが、文京遺跡では、布痕跡の残る弥生土器が多数出土しています。小さな布痕跡ですが、弥生時代中期~後期(1,800~ 2,000年前)の暮らしを雄弁に物語ってくれます。

●布の復元

弥生土器には、直径1~2㎝の粘土紐(突帯)が貼り付けられたものがあります。突帯には、布を棒や指に巻き付け、押し当てた痕跡(布の圧痕)が残るものもあります。布の圧痕にシリコン樹脂を流し込み、型取りすることで、当時の布を復元することができます。 その織り目は、いずれも経糸 ( たていと ) と緯糸 ( よこいと ) を交互に重ねて織られた平織 ( ひらおり ) です。復元した布の観察によって、目の細かい布(1㎝あたり 14 本 ×12 本前後)と目の粗い布(1㎝あたり 10 本 ×8本前後)の2種類あることを明らかにできました。目の粗い布が作業用の布とすると、目の細かい布は衣類などを再利用したものかもしれません。布の種類が増え、暮らしが豊かになっていることがうかがえます。

 

●布を作る糸

『魏志倭人伝』には、3世紀頃の倭人が麻などを植え、糸を作っていることが記されています。観察できた繊維も麻の一種と考えられます。布を作る糸の幅はわずか0.5 ㎜~1㎜ほどですが、織り目や糸の撚りを明らかにするため走査型電子顕微鏡を用いて観察しました。 糸の繊維は左下から右上に続いており、左撚りに撚られています。繊維を左手に持ち、右手で紡錘車を右回り(時計回り)に回しながら撚りをかけたことが推定できます。

布圧痕の分析から、2種類以上の布が作られていることを明らかにでき、糸の繊維を観察することによって、糸作りに関わる人々の所作まで知ることができました。布圧痕の残る土器が 数多く見られるのは、文京遺跡の特徴の一つです。布圧痕をシリコンで型取りし、走査型電子 顕微鏡を用いて観察する研究はこれまで行われていません。今後、電子顕微鏡を用いた観察方 法の工夫や植物学などの他分野の研究者と協業することによって、弥生時代の暮らしをより具 体的に解明できるでしょう。

 

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